人は誰でも空気中に含まれる酸素を吸って生きています。しかし、呼吸機能が低下した患者さんは、体内に必要な量の酸素を取り込むことが難しくなります。
不足してしまった酸素を家庭や職場などの生活の場において吸入し、生活すること…、それが在宅酸素療法です。以前は病院でしか行えなかった酸素療法が自宅でもできるようになりました。
酸素療法をされている患者さんはCOPD、間質性肺炎といった肺に関する疾患が多いですが、自宅でも療養できるようになったことで、酸素を吸入しながら住みなれた環境で療養を行い、仕事や趣味を楽しんだり、自由に外出したり、生きがいのある生活が可能となりました。また、在宅酸素療法のことを Home Oxygen Therapy の頭文字からHOTとも言います。

在宅酸素療法の保険適用基準

在宅酸素療法は健康保険が適用されており、下記の条件を満たした場合開始されます。

1.対象疾患

  1. 高度慢性呼吸不全例
    ただし、動脈血酸素分圧(PaO2)が55Torr(mmHg)以下の者、およびPaO2 60Torr(mmHg)以下で睡眠時または運動負荷時に著しい低酸素血症を来たす者であって、医師が在宅酸素療法を必要であると認めた者。適応患者の判定にパルスオキシメータによる酸素飽和度から推測しPaO2を用いることは差し支えない。
  2. 肺高血圧症
  3. 慢性心不全の対象患者
    ただし、医師の診断により、NYHAⅢ度以上であると認められ、睡眠時のチェーンストークス呼吸がみられ、無呼吸低呼吸指数(1時間当たりの無呼吸数および低呼吸数をいう)が20以上であることが睡眠ポリグラフィー上で確認されている症例。
  4. チアノーゼ型先天性心疾患
    チアノーゼ型先天性心疾患に対する在宅酸素療法とは、ファロー四徴症、大血管転位症、三尖弁閉鎖症、総動脈幹症、単心室症などのチアノーゼ型先天性心疾患患者のうち、発作的に低酸素または無酸素状態になる患者について、発作時に在宅で行われる救命的な酸素吸入療法をいう。
    「医療診療報酬点数表 平成20年4月版」より抜粋

在宅酸素療法に必要なもの

在宅酸素療法を行うためには酸素供給装置が必要になります。装置には、液体酸素装置と酸素濃縮装置の二つがあり、主治医と相談しながらライフスタイルにあわせて選択します。

  1. 1)液体酸素
    液体酸素を少しずつ気化させることで気体の酸素を供給するシステム。
    電気を使用しないため電気代がかからず、停電時にも使用できます。 高濃度/高流量酸素の投与が可能で、重症な患者さんにも使用することができます。 親器から子器に充填して、子器を携帯用として持ち運べます。
    ○メリット
    ・電気代が、かからないため経済的である
    ・電気を使わないので停電時にも使用できる
    ・高流量の酸素投与ができる
    ・子器が小型・軽量かつ比較的長時間使用ができる
    ・酸素濃度がほぼ100%である
    ○デメリット
    ・デリバリーが不便な地域がある
    ・定期的に設置型容器の交換が必要である
    ・充填作業がやや困難である
    ・子器は旅行時に、機内への持ち込むことができない
  2. 酸素濃縮装置・ボンベ
    部屋の空気を取り込んで窒素を取り除き、酸素を濃縮して供給するシステム。外出・停電時は携帯用酸素ボンベを併用します。
    ○メリット
    ・操作が簡便である
    ・比較的容易に連続使用ができる
    ・メンテナンスに手間がかからず廉価である
    ・ボンベは長期保存ができる
    ○デメリット
    ・電気代がかかり、停電時には使用できない
    ・使用中、冷蔵庫程度の振動音と廃熱が発生する
    ・高流量の酸素吸入が必要な場合には不向きである
    ・ボンベは交換が必要である

在宅酸素法の注意点 火気の取り扱いには注意!

在宅酸素療法を始めるにあたって、室内環境を整えましょう。装置の使い方は難しいものではありませんが、火の取り扱いだけは十分な注意が必要です。